はじめに

本科:礎技術編

はじめに/このテキストの目標と内容

A.セゴビア F.タルレガ
アンドレス・セゴビア
(1893-1987)
フランシスコ・タルレガ
(1852〜1909)

人間の神経機構は無限に訓練することができます。
正しい訓練を重ねれば、それまでは「天才」にのみ可能とされていたごとが、普通の人にもできるようになります。
その証拠は20世紀におけるスポーツ史に見ることができます。
1964年の東京オリンピックの金メダリストの記録の大半は、1990年代の高校生の記録にさえ及びません。
これは、けっして現代人の運動能力が高くなったからではありません。
その競技に対する効果的なトレーニング方法が次々の開発されていった結果なのです。

こうした現象をそのまま「芸術」に当てはめることはできませんが、演奏技術というテクニックのみの事柄にテーマをしぼれば、同じようなことが期待できます。
その演奏の表す「深い内容」「気高い精神性」などという分かりにくものはさておき、そこに「名曲」(自分の心ひかれる曲)があり、そして、自分自身の手で、自由にその曲を演奏することができたなら、それで十分満足できるのではないでしょうか。

20世紀までのギター演奏技術の訓練方法は、単に個人の経験(狭い範囲での、しかも謝った認識によることの多い)伝達に過ぎないことが大半でした。
従って、ある程度までは上達することができるのですが、すぐに頭打ちになってしまうわけです。

このジャスティメソードでは、だれもが20世紀を代表するギタリスト程度(A.セゴビアを除く)の演奏が可能になるような道が示されています。
「本科」のテーマは、そのための「音楽表現」の基本を学ぶことです。
一つ一つのステップを確実に消化していって下さい。
ギターを真に響かせて、美しい小品を素晴らしい演奏で仕上げていきましょう。
きっと貴方の心が豊かな感性で満たされることとお思います。
F.タルレガが創りあげたギターの美しい世界、A.セゴビアが歌ったギターの喜びあふれる世界、そうした豊かな心の財産を私たちと一緒にあなたも手に入れてください。