20.左手のテクニック(2)

20.左手のテクニック(2)

 とにかく「曲を弾くため」には左手のテクニックが必要です。
 右手のテクニックは「音楽表現」のためのものですが、左手は機能的な役目を持っているといえます。その曲の音構成をギターの指板上に移し替えることがテクニックの第1の目的となります。

 基本科の基礎ステップの段階では1フレットは1指が担当し、2フレットは2指、3フレットは3指(4指は3指の補助)が担当するといった『固定運指』をマスターします。
 そして、徐々に指の力、触覚を鍛えてゆきます。基本科後半の応用ステップではハイポジションの押弦パターンを覚えます。ただし、運指がある程度、限定された音形の曲を練習します。
 この段階では特に左手の練習というものは行いません。それよりもギターに慣れるということが重要だからです。
 勿論、最低限のフォーム・アクションはマスターします。
 本格的に合理的なフォーム・アクションを修得するのは本科に入ってからです。

 テキストにも記述されていますが、左手のテクニックは90パーセント以上フォームで決まります。フォームが悪いといくら練習しても上達することはできません。逆に、最初に良いフォームを覚えてしまうと、その後にそれほど努力をしなくても、自然に上達して行くものです。
 左手の合理的なフォーム・アクションについての理論的背景は、これまでも述べてきましたから、ここでは重複を避けて具体的なポイントの話を致しましょう。

 『左手のフォームの最大のポイントは1指のフォームにあります。』
 大部分の初心者は、1指が楽に動くので、つい1指が楽に動くようなフォームを作ってしまいます。その結果、元々動きの不自由な3・4指が更に不自由な動きをしなければならないようなフォームになってしまうことになります。
 写真1を見てください。

写真1:ポイントは1指 | 写真2:Cのフォーム | 写真3:Fのフォーム

 ③弦・5ポジションの「ド」の音を押えた場合の1指の理想的なフォームがこれです。
 ②弦に触らないように1指は立っています。この「立っている」状態がポイントです。弦をまたぐ方向(ネックに直角の方向)には立っているのですが、弦に沿った方向(ネックに並行の方向)に対しては「寝て」います。
 1指をこの角度で押弦すると、写真を見ても分かるように4指が楽に立つことになります。人間の指はいろいろな筋肉の複合した働きで動くわけですが、1指には他の指よりも一つ多くの筋肉作用が働きます(示指伸筋腱)。そのために少しくらいフォームが窮屈でも動きに支障はありません。

 それに対し、3・4指はただでさえ動きが鈍く、力も弱いのですから、この指が楽に動くようなフォームを作る必要があります。
 その最大のポイントが1指を寝かすようなフォームを作ることです。そのようにしてC(ド・ミ・ソ)のコード(和音)を押えてみると写真2のようなフォームになります。
 このフォームは「斜めのフォーム」です。それに対しF(ファ・ラ・ド)のコードの場合は直角のフォームを使います。これは1指がセーハ(①弦から⑥弦までまとめて押弦する押え方)をしているからです[基本科では①②弦だけのセーハを使いますから、Fコードも斜めのフォームで押えます]。
 この場合、もう一つ忘れてはならないことは、そうしたフォームを作るためには指先だけでなく腕全体のフォームのことも考えなければならないということです。

写真4-a:
基本のフォーム
写真4-b:
脇を閉めるフォーム
写真4-c:
脇を開くフォーム

 斜めのフォームを作るときには、脇を閉める(肘を身体に近づける)ようにし、直角のフォームを作る場合は逆に脇を開く(肘を身体から離す)ようにします。
 そうすることにより、手首・指先の動きはよりスムーズになります。
 全体のバランスを考えずに、小手先だけで良いフォームを作ろうとすると無理が生じますので、要注意!

 斜めのフォームと直角のフォームをどう使い分けるかは、押弦フォームがどういう音形かで定めます。
 1指と4指の関係がどうなっているかということが判断の基準になります。
 1指が①弦方向、4指が⑥弦方向ならば斜めのフォーム。その逆ならば直角のフォームが基本となります。
 しかし、ほとんどの場合は斜めのフォームを基本にして考えて良いと言えます。

 

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