25.右手のテクニック(2)
『爪の形は全てに優先する』
『爪』と一口に言っても、その形は人それぞれ実に様々で「ギターを弾く場合の正しい爪の形はこうである」という唯一の形を定めることはできません。しかし、ギターを弾くのに必要な機能の上で分けると、大体において普通の人の爪の形は2通りのタイプに分かれます。
1図のAとBのタイプです。
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基本的に男性の場合はAタイプの爪の人が多く、女性はBタイプが多いようです。
これは指の太さによって決まるようです。勿論、男性でも指の細い人はBタイプの爪の形をしていますし、女性でもAタイプの場合が結構あります。
また、人には親指・人差し指・中指・薬指・小指という5本の指があり、その5本とも形は違います。
普通の人の場合、p 指はAタイプに近く、i ・m ・a 指と小指に向かうにつれてBタイプに近く変化するようです。
また、一般に「ワシ爪」と言われる形の爪を持っている人もいます。これは、爪を伸ばすと先端が曲がってくるという特徴を持っています。これはAタイプの爪に時たま見られる現象です。
このように「爪の形」には大きく分類するとA・Bの2タイプ、そしてワシ爪か普通かという種類がありますが、ギターを弾くという目的から考えた場合、どれも差異はありません。
ただ、どちらかというとAタイプの爪の方が大きな音を出しやすいと言えるでしょう。
しかし、個別に爪の形を分析してもそこから一般原則的なことは導き出せませんから、一つのモデルを決めることにしましょう。
一応、ここではAタイプの爪の場合を考えます。指は p 指にしましょう。
大半の人の p 指の爪はAタイプであると思います。
形の整え方は、2図-Aのようにします。
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先ず、爪の両サイドの湾曲した部分を削り落とします。そして、わりと平坦(完全な平らにはならないと思います)な中央部分を尖らせるようにします。角度は120°から140°くらいになります(表面積の狭い爪ほど鋭角になります)。
この尖った部分が『離弦点』になります。そして、太いラインが弦と接触面(タッチエリア)となります。
基本的な発音方法は |
1.爪の接触面で弦を捉え(セットアップ) |
2.少し弦を押し込んで(プッシュ) |
3.接触面に沿って弦を滑らせ(スライド) |
4.爪の先端で離弦する(デタッチ) |
という4つの動作になります。
この時の注意は、セットアップの時、きちんと爪が押弦していることです。
左の図のようになっているといわゆるダブルデタッチになって、雑音が生じやすくなります。また、弦にかけたパワーが拡散してしまい、大きな音が出ません。
爪の湾曲度が大きい人は削り方によく注意して下さい。
右図のようにえぐりこむようにして削ると良いでしょう。
湾曲と「えぐり方」の角度は一致しています。
弦から見れば、爪がえぐれていて初めて真直の状態になるのです。
そうした注意を守って発音した場合、弦と爪の関係は2-B図のようになります。
この図では「指頭」については省略しています。
指頭の役割は |
1.押弦の際の弦と接触による雑音を防ぐ |
2.タッチの深さを調節するセンサーの役割 |
ということですが、ここではそれは知識として知っておくだけにしましょう。
i m a 指についても p 指と同じことだと言えます。
ただ、i m a 指は爪の形がBタイプに近い場合があります。その場合、弦と爪がきちんと「隙間なく接触」するように、タッチエリアの反対側も少しえぐるようにすると良いでしょう。
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デタッチポイント(離弦点=爪の先端)に関しては、ほぼ中央になります。そのうえで3図にもあるように(i m a 指で押弦フォームを作ってみるとよく分かりますが) i 指はほぼ中央小指寄りに、そしてa指は更に小指寄りにポイントを作ります。
これも人により(爪の形・指の長さ)微妙に変化するものですから、先生と相談しながら自分のベストの形を探していってください。
これも爪の背から見ると「浅爪」の場合と「深爪」では感じが変わりますから、指の腹側から見てチェックすると良いと思います。
そして、弦にセットしてみて、ほんの少し引っ掛かるくらいがベストです。
爪の役割というのは弦に対して |
1.圧力を加える |
2.速やかに離弦する |
という2つの目的があります。
爪が長いと、弦に対して圧力を加えるには便利ですが、もう一つの目的である「弦振動をスムースに起こす」ための「速やかな離弦」ということが難しくなってしまいます。
離弦のことを考えると、爪は短いほど良いといえましょう。
そのバランスをとることが大事です。
基本的には、弦をしっかりプッシュするスライド奏法とノンプッシュの場合のフック・ロール奏法が両方とも楽に行えるような長さと形ができていれば良いわけです。
この問題は右手のフォーム・アクション・パワーポイントの設定等とも密接に関わって来るので、一概に爪だけの問題として取り上げることはできません。
テキストを進むにつれて徐々に理想的な爪の形を作っていくつもりでいましょう。
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