18.人間工学とギターテクニック(5)

18.人間工学とギターテクニック(5)

 『ギターを使って音楽を形作ること』それがギターを演奏するということです。
 形作るための素材、それは『音』です。その音を発音するためには右指で弦を振動させます。だから、ギターを弾く場合の最重要の演奏技術は右指の『発音技術』なのです。

 ところが、それだけで音楽が作れるかというとそんなことはありません。
 根本の技術は右指にありますが、実際に音を組み立てるためには『左指の運動機能』が重要になってきます。
 こちらの技術は『外面的(目に見えるということ)』に分かり易いので、あまり深く考えなくても重要であることは分かります。

 が、右手の技術というのは『質的(=内面的=違いが表面的に見えない)』なものですから、初心者には理解しにくいものといえます。しかし、最重要の技術であることに変りはありません。
 だから、ジャスティメソードではギターの発音方法(右指の技術)を中心にカリキュラムが組まれています。

 そして、専科が修了する頃になると自分のヴィジョンとトーンニュアンスが一致するようになってきます。
 そこで初めて『左指の技術』が意識されることになります。
 右の完成なくして(音の素材がなくて)、左の技術(音構成の技術)があっても意味はないのですが、専科修了時期になりますと、今度は左指の技術が大変重要なテーマになります。

 音楽(曲)にはいろいろな音構成があります。その構成によって『曲の違い』が表されるのです。そして、その違いがあるからこそ、それこそ無数の名曲が存在するのです。
 ですが、その複雑な音構成をギターの指板(フレットボード)上に移すことを考えるとこれは一苦労ということになります。

 ワンパターンの動作で済むならば、フォームやアクションについて面倒なことは考えなくても良いのですが、それでは名曲は弾けません。
 音楽が変れば、要求される左指の押弦パターンも変化します。

 その変化に対応できる運動法則というものを見出さないと、新しい曲を弾くたびに一からやり直しということになってしまいます。
 それが、左手のフォーム・アクションの基礎テクニックということになるのでしょう。

 そのために人間の指の基本的な機能を知る必要があります。ただ、前項でも述べましたがあまり専門的になりますと本当に必要なことが分からなくなったりしますので、だいたいのことを理解してください。
 図を見てください。

 指の動作というものは単純に考えると「開く・閉じる」「曲げる・伸ばす」という2つの動作にまとめられます。
 いわゆる「ひろげる」動作というのは中指を中心として「外転・内転」という言葉で表されます。こうした動きを側屈運動(そっくつうんどう)と称します。そして、重要なことはこうした側屈運動をするときには常にMP関節が伸展しているということです。
 しかし、MP関節を伸展させてしまったら力が入りません。
 ではどうすれば良いのか? それが次回のテーマになります。

[基本的な左手のフォームと指の動き]
(=フィンガーアクション)

 

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