調弦方法について : 完全4度の音程で開放弦調弦を行う
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音の高さとは「空気を震わせる弦の振動数」によって人間の感じるニュアンスです。
一般にはこの高さ=周波数が同じ音を「同じ高さの音」ということで分類し、五線紙でも同じものとして扱っています。
そして、2つ以上の音がある場合、この2つの音の距離を「音程」とよんでいます。
ドとレは(ド ・ レと数えて)2度音程。
レとラだったら(レ ・ ミ ・ ファ ・ ソ ・ ラ)5度音程と言うように数えます。
では、ドから数えてドまでだったら何度になりますでしょうか。
ド ・ レ ・ ミ ・ ファ ・ ソ ・ ラ ・ シ ・ ド = 8度
この8度音程をオクターブの音程関係と言います。
この場合、仮に低い方のドの周波数が100Hz ヘルツ(1秒間に100回振動する)だったとしましょう。
すると、高い方の音の周波数は200Hz(1:2の振動数)ということになります。
そうすると、この2つの音を同時に出したとしたなら、2つの音の波長はきれいに混ざり合い協和します。
そこで、オクターブの音は協和音と呼ばれることになります。
しかも完全に協和するので「完全協和音」となります。
これと同じようにド・ソの音程も完全に溶け合います。
そこでこの場合は、ただ5度と呼ばずに「完全5度」(もちろん完全協和音)と呼びます。
また、ド・ファの関係も、同じような理由で完全4度と呼ばれます。
これは、振動周波数が2:3、3:4になるからです。
また、3度と6度の音程も割合協和しますので「協和音」と呼びます。しかし、2度・7度は協和しませんので、「不協和音」と言います。
これらの現象はすべて「音の周波数」の持つ特性によって生まれます。
周波数が割り切れると協和するし、割り切れないと不協和音になります。
詳しく述べると「倍音」の関係なのですが、ここではあまり深く理論に入ることはしません。
実用的な知識として覚えておいてほしいことは『音程には協和音程と不協和音程があり、そうした音程を積み重ねることによっていろいろな表現ができる』ということです。
そして、こうした事柄を単なる知識として知るだけでなく、実践的にマスターしてほしいものです。
つまり、完全4度の響きを覚えて調弦にもそれを生かしてほしいのです。
これまでは、 ⑤弦を基準とした場合、 ④弦の音を合わせるのに
基本科(ユニゾン式調弦法)= ⑤弦の5フレットのレと ④弦の開放弦のレを合わせる
本科(ハーモニックス式調弦法)= ⑤弦の5フレットのハーモニックス(ラ)と ④弦の7フレットのハーモニックス(ラ)を合わせる
というようにしていました。専科では「開放弦調弦」をマスターします。
■ 開放弦調弦法
開放弦だけで音を合わせるには完全4度の音程の響きを覚える必要があります。
最初は分かりにくいかもしれませんが慣れてくれば自然に聴き取れるようになります。
また、音には「周波数」だけでなくいろいろな要素が混ざっていますから、耳の良い人は逆に、うまく合わせられないかもしれません。
周波数以外の情報を聴いてしまって混乱してしまうからです。
しかし、2本の弦の振動を調整して音を整えれば協和音が聴き取れるはずです。
1. ⑤弦の音を音叉からとる
2. ⑤弦と ④弦の開放弦を完全4度の響きで合わせる
3. ④弦と ③弦の開放弦を完全4度の響きで合わせる
4. ⑤弦と ①弦の響きで協和させて ⑥弦を合わせる
5. ⑥弦と ①弦の響きで協和させて ⑥弦を合わせる
6. ⑥弦と ①弦の響きの中で ②弦を協和させて ③弦を合わせる
そして、最後はEの和音をだして、響きのバランスをチェックします。
また、ギターの調弦方法はEを中心とする音程だけでなく、Dを中心とする音程もあります。
具体的には、 ⑥弦を1音下げてレにする調弦方法です。
「ニ長調やニ短調」はもちろんのこと、この調の近親調の曲の場合もこの「D調弦法」が使われることがあります。
専科では課題曲のほとんどが「D調弦」の曲です。
更に、 ⑤弦も1音下げてソにすると「ト長調 ・ ト短調」が弾きやすくなります。
これは「G調弦」と言います。
調弦法を変えることにより、「ギターの響き」が一層豊かになります。
楽器には、響きやすい調と響きにくい調がありますが、ギターの場合は調弦そのものを変えて、より響きやすいようにするわけです。
こうした「変則調弦」は、ほとんどが「D調弦」で、ごく稀に「G調弦」があります。
バロック音楽では、 ③弦をファ♯にすることがありますが、取り立てて練習することはありません。一応の知識として知っておきましょう。
その場合の記号は、楽譜の最初に「 ⑥=Re ・ ⑥=D」などと書いてあります。
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