ジャスティメソード

5ステップ(1):トーンプログラミング・ハーモニーバランスの練習
 
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トーンプログラミングとは?
 これまで学んできた基本的な「音楽表現法」に加えて、このステップではトーンプログラミングを学びましょう。
 トーンプログラミングとは簡単に言えば、これまでとはちょっと違う『音色の変化』についての技術です。 これまでの音色の変化は、基本的には一つの音楽的雰囲気の中で、その表現に幅を持たせるための技術として学んできたわけですが、このステップで学ぶ「音色の変化」というのはもっと変化の激しいもので、まったく違う世界を感じさせるような音色の変化のことです。
 オーケストラが多くの違う音色の楽器を備えて多彩な世界を表現するように、ギターも1台でオーケストラのように多彩な音色で音楽を奏でることができます。
 絵画に例えるならば、これまでは絵の具を使わずに単色で絵を描き、デッサン力をつけて、その絵に陰影を与えるために(単色の中で濃淡)を表現して)音色を変化させていたわけです。 それでも勿論、立派な作品は描けますが、やはり、「色」をつけたほうがより鮮やかな「絵画」になることと思います。
 そして、ギターにはそうした性能があるのですから、その表現力をマスターして、いみじくもベートーヴェンが述べたように「ギターは小さなオーケストラだ」といえる演奏に挑戦しましょう。 そうした技法をギターのトーン・プログラミングと言います。
 音楽の主要3要素は「リズム・メロディ・ハーモニー」と言われています。 この3つの要素があれば、音楽は一応の形を整えることができます。 しかし、先にも述べたようにこれは絵画に例えるならばモノトーン(白黒)の絵になります。 それだけでも素晴らしい作品は作れますが、絵にもいろいろな絵の具が使われるように、音楽にもいろいろな色を使うと更に美しい作品になります。 この効果はバッハ、ヘンデルの時代にも使われましたが本格的に使用されたのはモーツァルトの時代からと言えましょう。 そしてベートーヴェン以降のロマン派の時代になると、「音楽と音色」の関係は更に密着になり、ドビュッシーの音楽になると、その音楽がどの楽器のために書かれたのかということが大変重要な意味を持つことになります。
 「牧神の午後への前奏曲」というドビュッシーの代表作などは、最初のテーマを演奏するフルートの音色が実に印象的で、このパートを他の楽器で弾いたならこの曲の魅力は半減してしまうことでしょう。 また、ラベルの「ボレロ」などもオーケストレーションの傑作と言えるでしょう。

トーンプログラミングの具体的方法
これまで、アタック・アクションによる音色の変化は次のように行っていました。
・+系の音
(縦振動を多く含む音)
 = 提示倍音が良く響く音
= レガートアタック
・0系の音
(縦・横振動が程よく混ざっている音)
 = 明るい音
= マルカートアタック
・−系の音
(横振動を多く含む音)
 = 高次倍音がよく響く音
= フック奏法
 この技術に加えて、弾弦位置アタックポジションを変えることによって音色を変化させることがトーンプログラミングの方法です。 音色の変化とは「倍音構造の変化」のことでありますが、ギターの場合は弦長のどの位置で発音するかによって、この倍音の含み方を変えることができることは既に知っていることです。
 いわゆる普通の音という場合、大体弦長の6分の1から8分の1の辺りで弾弦します。 この周辺で弦を弾いた場合が程よい音色になるからです。 ピアノなどは弦長の7分の1か9分の1の位置にハンマーがセットされています。
 弦振動の性質は弾弦位置によってなぜ変わるのでしょうか?
 弦長の2分の1で弾いた場合は、ちょうど第2倍音が消されることになります。 また逆に、その性格を利用して、その位置に左指を軽く触れて弾弦すると、いわゆるハーモニックス音が生じます。 しかし、ギターの場合はそうした「弦振動の性質」に加えて「振動エネルギーの伝達」とその「伝達距離とエネルギーロス」の関係を考える必要があります。
 ピアノの場合、ピアノ線は非常に固く張られているので、ハンマーの打弦エネルギーはほとんどロス無く共鳴板に伝えられますが、ギターは弦の張りが柔らかいために、初期エネルギーは弦の振動エネルギーに吸収されるので、ダイレクトにはブリッジを通して表面板(共鳴板)の震動エネルギーに転化されません。 だからこそ、余分な音(衝撃音=必要以上の高次倍音)が消えて美しい音が生れるのです。
 だから、ブリッジポジションでアタックすると「高次倍音」が多い響き(固い・輝かしい音)になるということです。 そして、アタックポジションがブリッジ(発音のためのトランス=エネルギー転換装置)から遠くなると、初期振動で発生した「多くの高次倍音」が弦振動に吸収されて、基音にちかい振動(柔らかく感じる音)が残り、その音がブリッジを通して表面板から発音されることになります。
 こうした「弦振動の特性・振動エネルギーの伝達の性格」とアタックアクションによる発音法の組み合わせによって、より多彩な音色の変化を作り出すことができるのです。

 作曲者は自分のイメージを楽譜に表現しています。つまり、どんなニュアンスの音が欲しいのかということが左指のポジション指定に表れています。 演奏者はその意図を汲みとってより豊かな表現をするように努力します。


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