ジャスティメソード

4ステップ(4):オクターブハーモニックスの練習・左指(運指)の合理性
 
−21−
クレッシェンドとは迫ってくること
 アゴーギグが「音楽の自然な響き」を生むための『音の長さ』を作る表現法ならば、クレッシェンドは「音楽の表情を豊かにする」ために『音の大きさ』の変化を作る表現法であると言えます。
 音は常に動いています。それは「高い・低い」「長い・短い」「大きい・小さい」「強い・弱い」「重い・軽い」「厚い・薄い」「速い・遅い」「遠い・近い」等の印象を人に与えながら流れ続けます。
 しかし、その設計図である「楽譜」にはそんなこまごました「表情の説明」など書いてありません。
 しかし、演奏効果として、ほとんどの人が同じような印象を受ける「普遍的な感受性」と言うものがあります。 その中の一つが「迫ってくる感じ」を受ける場合です。 いわゆるクレッシェンドの間隔です。 一般の演奏表現法のテキストには「迫ってくる感じ」を出すためには「音量の増大(デシベルの変化)」を図ればよいと書いてあります。
 本当にそうでしょうか?
 クレッシェンドされた音を聴くと「音量の増大がある」というのは要素の1つであり、本質要素はそれではありません。 例えば、自分から1メートルまで大きくさせても「風船が大きくなった」という感想が残るだけです。
 それよりも、直径10センチの風船を1メートルの距離から目の前10センチの距離に近付けてみた場合の方が「迫ってくる感覚」があります。 そして、「自分の視野」の中ではその風船は巨大なものに見えます。つまり大きくなったわけです。 音楽を3次元的に捉えると「どういう表現をすれば良いか」ということが分かってくると思います。 2次元的に捕らえれうとクレッシェンドは音を大きくしていけば良いように考えられますが、そうではありません。 では、具体的にどのようにギターの発音を行えば良いのでしょうか?
 音量を段々アップさせていくことは勿論ですが、それに加えて音色も「−系」に変化させていきます。 この場合の音色の変化は発音法の変化で行うのではなく、アタックポジションの変化で行います。 そうすることによって、フレーズ内のメロディの指向性等の表現を安定して行うことができます。
 そして、これが最も重要なことですが、メロディは音色の変化で「近付いてくる」感じを出しながらもベースは「+系」の音のまま大きくすることによって、両者の遠近感の落差を作ります。 そうすることにより、フォルム(立体感)も広がってゆき、聴く者に対し「大きくなって・迫ってくる」印象を与えることができます。 音量の増大と音色の変化、そして2声の音色のコントラスト(対比)によってクレッシェンドは表現されるのです。






<< 戻る | 「専科」目次 | 次へ >>

▲PAGE TOP

〔ジャスティメソード〕トップへ

      

© 2004 Justy Guitar Association