ジャスティメソード

4ステップ(1):オクターブハーモニックスの練習・左指(運指)の合理性
 
−18−
 ギターの発音方法の特殊技術に「オクターブ ・ ハーモニックス奏法」があります。ハーモニックスの原理を考えてみましょう。
 
 弦の2分の1のポイントを指で触れておいて弾弦すると、そのオクターブ上の音が生じるという性格が弦楽器にはあります。 普通のハーモニックスの技術は左指でポイントに軽く触れ、右指で弾弦します。これを右指だけで行うこともできます。 その場合、i指で軽くポイントに触れ、a指で弾弦します。i 指が弦長の2分の1ポイント(①弦の12フレット)にあれば、ミのオクターブ上の音が出るわけです。
①弦の1フレットを左指で押弦すると「ファ」の音になりますが、そうしておいてちょうどその弦長の2分の1ポジション(13フレット)を右指のみによるハーモニックスで弾くと、ファのオクターブ上の音が出ることになります。
0フレット=12フレット
1フレット=13フレット
2フレット=14フレット
3フレット=15フレット
4フレット=16フレット
 弦長の2分の1のポイントは上の表のようになります。 これはよく見ると、12フレットを開放弦だと思って左指のポジションをi指でコピーすると、オクターブハーモニックスのポジションになることが分かります。 実際に音を出して理解を深めましょう。
 
 楽譜の記号は上記のようになります。また、Harm.8va(オクターブハーモニックス)のことを armonicos octavados(アルモニコス・オクターヴァドス)と表記している楽譜もあります。 このオクターブハーモニックス奏法を用いることによって、ギターの表現は更に多彩になり、その魅力を増します。

アゴーギグ(速度増減法)について
 音楽の表現方法で、非常に重要な技術の一つがこの「速度の増減法」です。
 1ステップでも「音価のリアリティ」ということで述べましたが、音楽の持つ時間感覚は機械的な「時計時間」とは違うものです。 その曲を構成する1音1音にきちんと表情をつけて指向性を持たせると、自然とその音の持つタイムは一定ではなくなってきます。
 フレーズ単位で考えると、音楽は「深い(重い)音」と「浅い(軽い)音」が交互に表れて進行してゆきます。 当然、深い音の持つ音価は浅い音よりも長くなります。 その表現は主に低音でつけます。 寄せては返す「波」のように各フレーズを捉えましょう。
 その波の大きさに合わせてメロディを構成する「音」と「音」の時間的感覚を変化させます。 1音1音の間隔が違うからメロディの流れが「自然」に聴こえるのです。
『楽譜上の音と音を隔てているのは時間(タイミング)ではなく空間(距離)である』
 と考えてください。私達が道を歩く時のことを思い起こしてみましょう。 同じ距離を歩く場合でも、その区間が平地であるか、坂道であるか、上り坂なのか、下り坂なのかで使う時間が変わってくるものです。
 この曲は3拍子で作られていますから、メロディは「 」「   」と1拍目を大きく弾きます。 「大きい」というのは単に強い音という意味でなく
○。。 ○。。
 というように体積が大きいと考えてください。 この音の体積に合わせてメロディを構成する1音1音の間隔が違うからメロディの流れが自然に聴こえるのです。
 また、この曲は、拍子感を出すために「表・裏」の音色と音量を意識して弾くと、自然にギターが響くような「音形と音のポジション」が使われています。
 ギターには「ギター独特の響き」と言うものがあります。 ②弦の10フレットを mf 以上の音量で弾いてみるとすぐに分かりますが、その音は単に ②弦の「ラ」の音が鳴っているだけでなく、 ⑤弦 ⑥弦、また他の弦も共鳴しているのです。 その「共鳴現象」がギターの音を豊かにしてくれます。 こころみに1指で軽く他の弦の振動を止めておき、3指で②弦のラを押弦おうげんして f の音量で弾いてみましょう。 随分ずいぶんと違う「響き」になると思います。
 こうした「ギターの響き」をしっかり聴きながら曲の構成を考えると「ソノリティ」あふれる演奏になります。 トーンプロポーションも感じられ、自然なアゴーギグが可能になります。
 専科のこのステップまでレッスンが進まれた皆さんは、技術的には自分の要求通りの音が出せる筈です。 後は自分の出している「音」を良く聴いて弾きましょう。


<< 戻る | 「専科」目次 | 次へ >>

▲PAGE TOP

〔ジャスティメソード〕トップへ

      

© 2004 Justy Guitar Association