ジャスティメソード

総合練習:多彩な美しい音色を求めて・タルレガの書法を知る
 
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タルレガの書法について
 ここまで進んだ皆さんはギターの基礎技術をマスターしたといえます。これからはその基礎技術をもとに「演奏表現法」を学ぶわけですが、俳優が芝居をするのに良い脚本が必要であるのと同じように、演奏をする者にとって良い作品が必要であることは当然のことです。 その「良い作品」とは、ギターを弾く者にとってはギターがよく響く作品であってほしいものです。 ピアノで弾いた場合は素敵な曲でも、ギターで弾いてみたらその曲の魅力が消えてしまうということもありますし、ギターで美しい曲なのにピアノに移したらつまらない曲になってしまうこともあります。
 これまでに学んできたことは、主に弾き方(右手の技術)の問題でした。 その演奏技術が最大限に生かされるようにしたいものです。 今度は楽譜(左手の技術)のマスターを目指します。 ギターの音色の奥深い魅力である「多彩な美しい音色」は、弾き方だけではなく、楽譜にもその秘密があるのです。
 それは、一つの音程を何種類かの音色で表現できるギターの性能を生かして楽譜を書くということです。 例えば「夢見る人」では、メロディの最初のラの音を①弦の5フレットを用いずに②弦の10フレットで弾くことにより、より深い響き(優しさが表現される)が作られます。 ギターの各弦にはそれぞれ「性格」があります。 その特性を生かすことによってギターはより幅広い表現力を持つことができるようになります。 そうした楽譜の書き方、いわゆる「書法」を確立したのがF.タルレガです。
 専科では、ギターの美しい表現を可能にする書法ですべての曲が書かれています。 本科の最後にそうした曲の練習をしてみましょう。 最初は「運指」の問題でちょっと混乱するかもしれませんが、慣れてくればそんなに難しいことではありません。 ポジション移動、ミドルポジション、ハイポジションの音程ということに早く親しみましょう。
 また、皆さんの場合、弦の振動特性による音色の変化(縦振動と横振動を微妙に引き分けること)も演奏の要素に加えています。 このことによりタルレガの時代よりも更に深く音楽の内容を表現することができます。 これが「ジャスティ奏法」ということであり、より人の心を動かす演奏表現を可能にした弾き方なのです。 そうした技術をすべて使い切って、聴く人の心を動かすような演奏を目指してみましょう。
 ギターを弾くことの目的はテキストを修了させることではなく、心を打つ演奏ができるようになることです。 芸術を行うという行為は深く物事の本質に迫るということであり表面を取りつくろってごまかしてはならないものです。 すべては自分自身に戻ってくることですから、心ゆくまでじっくりと弾き込んでみてください。


 「夢見る人」 S.フォスター作曲







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