ギタリストへの道

6.デタッチの発見(1) −6−
 ギターを弾く、それも「音楽」という芸術を行うために弾く――と言うと固い感じもしますが、実際のところ「人の心に触れる美しい演奏」をしようということは、つまりは芸術なのです――ためには、まず一つの音を自分の思い通りに出させるようになることが必要であるという結論になりました。
 といっても、ギターでバイオリンの音やフルートの音を出そうと思っても、それは不可能なことで、思い通りの音とは物理的にギターの出せる音の範囲の中でのことです。
 ギターという楽器の構造は「発音体である弦」とその音を増幅させる「共振体である共鳴胴(ボディ)」からなっています。それに加えて、フレットがあり(音程を作り、音の余韻を伸ばす役割)ますが、本質的には弦と共鳴胴がギターの正体です。
 そして、ギタリストとギターの関わりは弦を弾いて発音することによって始まります。この「発音行為」をストローク、アタック、弾弦、弾く等という言葉で表します。ここでは単純に「弾く」という言葉を使うことにします。
 その「弾く」という行為は
 1.指が弦に触る(タッチ)
 2.弦を押す(プッシュ)
 3.指が弦から離れる(デタッチ)
 という3つの動作(アクション)の複合行為のことを意味しています。
 ところで、このアクションはギターを弾く側の都合ですが、ギターの側からこのことを考えてみましょう。
 ギターサイドから考えてみると、演奏者が爪で弾こうが指頭で弾こうが、はたまたピックで弾こうがそれはどうでもよいことで、問題はどういう状態で弦が振動するかということなのです。
 左の図は弦の振動開始の時の状態を表しています。
 大きく分けて a b c d e という弦の振動開始の位置が考えられます。
 実際問題として d e という位置はありにくいので a b c を考えの前提にしましょう。
 するとどういう音になりますでしょうか。
[a]の場合=d に近いのですが、余程振幅を小さくしないと弦はフレットにあたり、いわゆる「ビレた音」になってしまいます。
[b]の場合=純粋にこの方向に振動させることは不可能に近いのですが、この場合ほとんど表面板が振動しません。
[c]の場合=程よく音量もあり、豊かな響きが生れます。弦振動のエネルギーがバランスよく表面板を震動させます。
 実際は弦の横振動と縦振動が程よくミックスされていわゆる楽音となります。つまり離弦点(デタッチポイント)は a から c の間にあるということです。
 そして、基本位置からその離弦点までの距離が大きい(より強くプッシュすると大きな音になり、小さいと小さな音になるわけです(勿論、振動方向によっても人間の耳が感じる音のニュアンスによってより緊張感のある音、おおらかな感じのする音というような弾き分けもあります)。
 ギターを弾くということの本質はこれだけです。これ以上の何もいらないのです。後は音楽の要求に合わせて、どの位置で弦の振動を開始させるかということがそのうえに加わるだけなのです。
 そのコントロールをするためにギター演奏技術(右手の)というものがあります。そのためのフォーム、爪の形、アクションの方法などということが考え出されました。それがジャスティ奏法ということになります。
 しかし、初心者の場合、左手の問題の方が気になるかもしれません。楽譜に書かれている音符がギターのフレット上ではどこになるのかという「楽譜を読む(音をギターに移し替える)力」=読譜力、そして、複雑な音構成をフレット上で再現するための左指の柔軟さや力強さが先決問題だと感じるかもしれません。が、それは少し練習すれば誰でも上達するものです。 それよりも「音楽を行う場合」は右手の技術の方がはるかに重要なのです。といっても左手のテクニックを軽視するものではありません。それはそれで順を追ってマスターしてゆくべきものです。
 ただ、最重要なのは発音方法であるということなのです。
① 指先が指頭から弦に触れ ――――――タッチして(Touch)
② 指頭と爪の間で弦を捉え ――――――セットアップして
③ そのまま弦に圧力を加え ――――――プッシュして
④ 1点に力を集中させて ―――――――パワーポイントを設定して
⑤ 爪の表面(3次元的に)滑らせて ――スライドさせて
⑥ 離弦する ―――――――――――――デタッチする(Detouch)
このアクションが基本的なアタックの方法(レガートアタック)です。



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